外部専門家活用ガイドラインが改定されて1年
国土交通省の外部専門家活用ガイドラインが改定されて1年が経過した。
この改定を受けて、実務でもいろいろな変化が起こっている。
今回はこの変化について述べてみたい。
改定ガイドラインは、それまで実務では広がっていたが、法令上は不明確でグレーゾーンにあると考えられていたマンションの第三者管理(外部管理者管理)について明確化したことだ。
そればかりでなく、利益相反の危険が高い管理会社による外部者管理者を公認したのである。その結果、マンションの第三者管理とは、理事会廃止型の管理会社を意味するという誤解が世の中に蔓延している。
新ガイドライン公開により、管理会社による外部管理者が公認されたとして、外部管理者制度を開始した管理会社も多い。しかも、一部の管理会社は、ガイドラインが法令でなく強制力がないため、新ガイドラインの趣旨に反した運営を続けている会社も多い。
これでは、管理会社による外部管理者が公認化されたことだけを利用したいわば良いとこ取りにすぎない。非常に遺憾である。
新ガイドラインは、外部管理者管理が管理組合にとって実質的に損害を受けるリスクがあることを前提に、そのリスクを軽減化しようとしたものである。
しかしながら新ガイドライン発表後、管理組合の団体やマンション管理士を含む多数の有識者から批判を受けている。
理由は新ガイドラインが管理会社による外部管理者を公認したことにより、管理会社による外部者管理が急増したことだ。これは、確定した統計が出ているわけではないが、マンション管理センターの依頼を受けて適正マンションの認定作業を行うマンション管理士の肌感覚である。特に新築マンションを対象とした予備認定で顕著らしい。新ガイドライン制定前の予備認定申請は、大手デベロッパーによるタワーマンションが主だったが、新ガイドライン後はタワーマンション以外の新築マンションの多くも理事会廃止型の外部管理者管理の予備申請が多数なされているとのことだ。
また、新ガイドライン制定前はグレーゾーンとして適正化法違反に問われる可能性があるので外部管理者管理に参入を控えていた管理会社が、中小の管理会社を含めて(削除)参入を表明し、管理組合に外部管理者への変更を求めている事実が散見されるからである。私の関係するマンションでも数件このような申し入れがなされた。
私個人としては、マンションの外部者管理(特に理事会廃止型)は管理組合や区分所有者に損害を与える可能性が高く、慎重に行うべきだと考えている。しかしながら、実務家としては、新ガイドラインが発表された以上、管理組合や区分所有者の利益を守るため、新ガイドラインの趣旨に沿って外部管理者による管理を行うことが必要である。
私はここ数年にわたりマンション管理士による第三者管理を普及する活動をしてきた。グレーゾーンとはいえ、管理会社による第三者管理が広まりつつあったので、このままでは管理組合の被害が拡散すると考えたからであった。
しかしながら、新ガイドライン制定後は公認化により管理会社による外部管理者管理が拡大し、管理組合のリスクがより高まっていると言わざるを得ない。
そこで、我々も我々が管理組合に提供可能なサービスを整理し、新ガイドラインにより必要と考えられる外部監事の就任などの新たなサービスを開始した。
もちろん、これらのサービスは我々のコンセプトである「継続性の担保」「損害の担保」「正当性の担保」が組み込まれている。
新ガイドラインは外部管理者管理のリスクを軽減化することを目的としている。残念だが現状は逆にリスクは高まっていると言わざるをえない。
理事会廃止型の外部管理者管理は一度開始してしまうと元に戻すのは事実上不可能に近い。
外部者管理の話が現実化した場合は、決定する前に必ず地域の地方公共団体やマンション管理士会、管理組合の共助団体などに相談してほしい。外部管理者制度は管理組合や区分所有者にとって非常にリスクが高いことを理解してほしい。(事務局長 渡邉 元)
渡邊元(わたなべ はじめ)
MSAマンション管理士事務所 代表(メールアドレス:msahajime@gmail.com)
・明治大学法学部卒業
・米国法人総合金融会社・航空会社勤務
・大手マンション管理会社に再就職し、マンション管理士等関連資格を取得
・退職後、独立開業